じつかいせきのTRPG雑記

どうせルールブックすら読んでないあなたのための TRPG マルチルート/エンドシナリオの執筆法と回しかた

ご意見ご感想や追記してほしい事などありましたらリプなりIssueなり頂ければ参考にいたします。

概要

  • ルートというものは勝手に生える。 シナリオを書く側が生やしてはいけない
  • 「選択」は結果が予測できてこそ選ぶ価値がある。 先の見えない選択を迫ってはいけない
  • エンドに名前をつけてはいけない。それはプレイヤーの選択や行動の結果に 優劣をつける 行為に等しい。

流石に学んだ。うだうだ長文を書いたところで殆どの人間は 3センテンス以上の文章を読めない という事をすっかり失念していた。 古き掲示板の「今北産業」は理にかなっていたのだ。人間が理解できるのは3行までなのだ。 だからまぁ、この先はもう「補足」であるし、相応の根性がある人間しか読まないだろうという前提で書く事にする。 どの方向の「根性」であるかは別として、だ。

なお全体的な前提として「 シナリオ執筆者とGMは異なる可能性がある 」物としてこの記事は執筆されている。

執筆編

能動的にルートを生やしてはいけない

「マルチルートの書きかた」と題してあるのに何を言ってるんだと思う事だろう。正直私自身もそう思ってる。だが要約するとどうしてもこういう文言になる。

あなたがシナリオを書いている途中に「こういう展開を生やしたい」と思ったら、一度筆を止めなければいけない。「止めるべきである」ではない。「 止めなけれないけない 」。 その時のあなたは 捻じ曲げたストーリー を作っているにすぎない。なぜならあなたは 刺激を求めている からである。 今書いているシナリオが平凡に見える。もっと刺激的で突飛な展開がほしい。 だからあなたは能動的にルートを生やす のである。 そのように作為的に作られた展開は多くの場合不自然であったり理不尽なものであったりする。余程うまく書かなければプレイヤーを納得させるのに不十分な物となるだろう。 そして小説家でもないかぎりあなたにその能力は無い。あると自負するなら NOTE でもなろうでも書いた方がよっぽど自尊心が満されるだろう。

よく考えてほしい。 TRPG という遊びの特性上 同一のシナリオでも遊ぶ人間が異なれば違う展開/結末になるのは自然な事である 。 発生している事件にどのように立ち向かうか、途中で出会った事象にどう接するか、その選択の可能性一つ一つが既にマルチルートであり結末が異なるのならばマルチエンドである。

まず一本「順当な事件の解決法」を書くべきである。そしてその途中にある要素についてプレイヤーがとりそうな行動をある程度列挙し、それに沿った展開を補足する。 それによって最終的な結末が変わってくるようだったらそれに沿ったエンディングを用意する。もしマズい結末になりそうだったらそれを抑制するものを用意するべきかもしれない。

もしあなたがそれでは不十分だと感じる場合、それはよほどプレイヤーの能動性を失わせているシナリオになっているか、あるいはあなたの想像力が足りないかのどちらかだ。 シナリオの展開をもういちど確認しプレイヤーが能動的に行動できる余地があるかチェックする事。 さもなければそのシナリオは「吟遊シナリオ」となりプレイした人間にとっては理不尽の塊に見えるかPCの存在意義に疑問を抱くかのどちらかになるだろう。

……なんてことはない。「普通の」シナリオの書きかたである。それで十分なのである。 前半はともかく後半はルールブックにすらだいたい書かれている。 君たちの大好きな CoC は得に、だ。

なんでこんな事を書かなければいけないのだろうとは思っているが、まずはそれに気付くべきである。

先の見えない選択肢を迫ってはいけない

これは プレイヤー体験のためのTRPGシナリオアンチパターン にも書いてあるが、先の見えない選択肢というのはその多くが「苦渋の決断」であったり 「良心の裏切り」が発生する余地のある選択だったりする。

「苦渋の決断」そのものについてはもう勝手にやっとれという感じであるが、であるからこそ得にエモシ勢みたいに性格の悪いシナリオを書く部類の人間は「選択を迫る」以上その「責任」を負わせたいだろう。 よって「選択」を迫る時点でその先に起こる事は明白に予想できる状態にする、あるいは情報として明確に呈示しなければいけない。だからこそ選ぶ「価値」が出るという物である。 得に「良心の裏切り」についてはプレイヤーに直接的な喪失感を与えるため絶対にやってはいけない。例えば「諸悪の根源が命乞いをしてきたから見逃してやったら後からいきなり皆殺しにされる」とかである。

また、「ナゾ」についても同様である。これもアンチパターンの記事に書いてある が、 素人が作る「ナゾ」は間違いなく意味不明で一貫性がなく答えるのが不可能な物になる 。 断片的な情報しか出てこないならまだいいとして悦に浸ったような怪文章を見せられて赤い扉を開けるか青い扉を開けるかとか言われたらそれはもう違うゲームである事を理解した方がいい。

もしあなたが GM でどこかから拝借してきたシナリオが「先の見えない選択を迫られる」ような展開になったら情報収集でも閃きロールでもなんでも追加して なんとかして先の展開をPCに伝えるべき だ。 なんならぶっちゃけてしまってもいい。はっきり言って先の見えない選択肢について議論している時間は無駄でしかない。結果が呈示されていない以上結論が出る事は一生無いからである。

エンドに名前をつけてはいけない

冒頭にも書いたが、この行為はプレイヤーの 行動に優劣をつけるのに等しい 。プレイヤーの行動を尊重するという意味で間違っても 「 ナントカエンドでしたねーww いやートゥルーエンド行けなかったですねーwww 」なんて後からプレイヤーの事を嘲笑ったりしてはいけない。 そのつもりがなくてもこの言葉はシナリオに全力で向き合ったプレイヤーにとっては嘲笑にしか聞こえない。なんでわざわざプレイの結果を評価されなければいけないのか。

よって仮に想定される結末がいくつかあったとしても それに名前をつけてはいけない 。シナリオに全力で向き合ったプレイヤーの選択は全てがベストチョイスでありその結末がどのようなものであれそれは最善の結果なのだ。

もしあなたが GM でどこかから拝借してきたシナリオのエンドにご丁寧に名前がついている様だったら、それは 全力で伏せる事 。くりかえして言うが、プレイヤーの選択に優劣を付けてはいけない。

GM編

行動によって発生する脅威や不利益は必ず警告する

「先の見えない選択肢を迫ってはいけない」でも触れたが、 PC が行動を起こした事により発生する脅威や不利益は必ず警告する事。

本来は「その時点でPCが予想できる範囲の」と但し書きが付くのだが、そもそも想定外の不利益や脅威が発生するというのは先述の「先の見えない選択肢」に該当するので何が悪いと言われればシナリオが悪い。 だからこそ「まずい選択」をプレイヤーがしそうな時はそれまでの話を復習し、あるいは新しい情報を PC に与えできるかぎりの警告を GM から行う事。

逆に正しい選択をしているのにプレイヤーが不安がっている時は「それでいいい」と後押ししてあげてもよい。 GM からの「ぶっちゃけ話」は円滑な卓進行において意外と重要である。

「種明かし」を能動的にしない

「エンドに名前をつけてはいけない」とほぼ同義であるのだが、セッションが終った時にプレイヤーから聞かれたならともかく「あの時ああしていればもっといい結果になったんだけどなー」みたいな話を GM から言ってはいけない。 プレイヤーの行動はプレイヤーが真剣にシナリオに向き合っている以上全て尊重されるべきであり、そこに後からケチをつけてはいけない。